エンジェルフライト

エンジェルフライト 国際霊柩送還士
佐々涼子著 (集英社)
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■佐々涼子
フリーライター
第10回(2012年) 開高健ノンフィクション賞受賞

国際霊柩送還士。
(こくさいれいきゅうそうかんし)

初めて聞く仕事でした。

海外で事故や事件、病気で亡くなった方々を、日本で受け入れてご家族に届ける。
日本で亡くなった外国の方々を、祖国のご遺族に届ける。

それが国際霊柩送還士の仕事です。

本書は、日本で唯一の専門会社「エアハース・インターナショナル社」を取材した、ノンフィクションです。

映画「おくりびと」で、納棺士という仕事がクローズアップされましたが、「あれはきれいごとです」と、エンジェルフライトを立ち上げた木村社長は語ります。

国内でも、数週間経過したご遺体や、事故死したご遺体の様子は尋常ではない。
まして、海外で命を落とされたご遺体が、どういう状態で日本に搬送されるのか。

空輸による気圧の変化で、さらに傷つけられるご遺体。
宗教、文化、医療の違いからくる、扱い方の違い。
手続きの煩雑さ。
紛争国からの搬送の難しさ。

自分が海外に行くとき、「もしも」のことは、考えません。
例えば保険に入っていない方が、その「もしも」の時、どれほどの金銭的な負担が遺されたご遺族にかかってくるのか。

遺体ビジネス、と言う言葉も耳慣れません。
「遺体ブローカー」なる、ずさんな業者たち。
悪質な業者によって、貶められたご遺体。

そんなご遺体を修復し、生前の姿そのままに美しく整える作業は、想像をはるかに超えて過酷な現場です。

「お父さん、大変だったね。つらかったね」と、スタッフはご遺体に語りかけながら、修復にあたります。
彼等は、人知れず黙々と、精魂こめてその仕事に打ち込みます。
そして「よかったね、お父さん。これで娘さんたちに会えるよ。素敵になった」と、送り出す。

ご遺族は、深い悲しみの中で、生きていたときのような「その人」と対面します。
スタッフに「ありがとう」と、ことばをかける方も多いそうです。
そんな状況ではないのに・・・

ニュースになる重大事件や、事故の現場から、取り上げられることのないケースまで、スタッフは、必ずご遺族に寄り添います。
現実におきた事件、事故が実名で出てきます。
また、東日本大震災の時のどうすることもできない現実も描かれています。

何気なく、「○○さんのご遺体は静かに、日本に戻ってきました」とニュースで流れるその「現場」。
想像したこともありませんでした。
きれいごとではない「現場」を、心を込めて「きれいごと」にして、ご遺族に返し続けるスタッフ。
まるで自分の命を削るような仕事です。

・・・・・・
著者の佐々さんは「20歳代の後半、結婚後に仕事をしたいと思い立ち、日本語の教師をしていたとき、日本で暮らしながら片言の日本語しか話せない人たちと接していて、日本人とほとんど話したことがないような人たちが病気をしたり、事故にあって亡くなったらどうなるのだろうと感じたのがきっかけでした」・・と、語っています。
社会の表舞台に現れることがないその存在について、何度も拒絶されながら、最後に取材を許可されたそうです。

死者の死を、確かに受け入れ、悲しみ、そこから新たな生を生き始めるために…
今日も、懸命に働いている人たちの「仕事」を描いた本です。

エンジェルフライト(アマゾン)

エアハース・インターナショナル

■以前、このブログでご紹介した女性納棺師、笹原留似子さんの著書も、合わせてご紹介いたします。
2012年ブログ記事

笹原さんは、震災後、ボランティアで300人以上を復元した女性納棺師です。
愛がたくさん入った本です。
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おもかげ復元師(アマゾン)

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ogatamayumi

Author:ogatamayumi
緒形まゆみブログへようこそ!

東京都出身。元、公立中学校教員。
現在は、フリーとして、音楽教育や吹奏楽に関わっています。
このブログを通じて、音楽や教育、吹奏楽やその他、心に感じた事柄をみなさまにお伝えできればと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

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